
腎臓の働きが悪くなると

腎臓という臓器は尿を作るだけでなく、心臓、腸、骨などの様々な臓器と関わっていて体全体をコントロールしています。
腎臓の働きが悪くなり、役割を担えなくなると全身に様々な合併症が起きて、対策が必要になります。
腎臓の働き
腎臓の働きはシンプルにまとめると
- 不要なものを体の外に出す
- 必要なものを体にとどめておく
- 体に必要なホルモンなどを作る
の3つがあります。
腎臓には糸球体(しきゅうたい)という場所と尿細管(にょうさいかん)という場所があって、それらの緻密な構造によってその役割を果たしています。
糖尿病や高血圧などによって腎臓の働きが悪くなると、この3つの働きが低下して全身に様々な症状や合併症を引き起こします。
筋肉が衰える
腎臓の働きが悪くなると、筋肉量や筋力が低下しやすくなり、健康な人と比較して身体機能が7割程度になると言われています。
結果、寝たきり、サルコペニアになる確率が高くなり、例えば慢性腎臓病ステージ5の患者さんは健康な人と比べて、寝たきりになる確率が約5〜6倍になると言われています。
ほんの10年前まで慢性腎臓病の患者さんは、運動をしてはいけないと言われていましたが、ここ数年で筋力を守るため積極的に運動をしていきましょうと考えられています。
腎臓リハビリテーションという概念も生まれており、万歩計や歩数手帳を使って運動を促す流れになっています。
腎臓リハビリテーションについて詳しく知りたい方は「腎臓リハビリテーション」の記事をご参照ください。
水分が身体に溜まる
腎臓では、脱水の時には尿から水分を出さないように、水が多い時は尿から水分を出すように調整する機能があります。
働きが悪くなると水分が排泄されず足が浮腫んだり、進行すると肺や心臓、全身に水が溜まり呼吸が出来なくなったりや心不全の原因となります。
腎臓病と水分について詳しく知りたい方は「腎臓と足のむくみ」の記事をご参照ください。
ミネラルの異常が起きる
腎臓は、尿細管という緻密な構造を持つ箇所でナトリウム、カリウムなどミネラルを調整する役割を担います。
腎臓の働きが悪くなるとミネラルの調整異常が起きて、様々な異常をきたします。
特に大切なのはカリウムというミネラルが溜まる高カリウム血症、重炭酸イオンが不足して体が酸性になるアシデミアは、重症化すると死に至るため注意が必要です。
血圧が上がる
腎臓では、体の水分や塩分の調整や、レニンやアルドステロンと呼ばれる血圧をコントロールするホルモンを調整する働きがあります。
腎臓の働きが悪くなるとこの調整に障害が起きて血圧が上がりやすくなります。
慢性腎臓病では、半数以上の方に高血圧があり、重症度が増すと複数の血圧の薬を飲まないと血圧が下がらなくなります。
骨が脆くなる
腎臓は活性型ビタミンDと呼ばれる、 腸からのカルシウムの吸収を促すビタミンの調節に関わります。
腎臓の働きが悪くなると活性型ビタミンDの調整が出来なくなり、血液中のカルシウムが低下します。
血液中のカルシウムが低下すると、骨を溶かしてカルシウムを補おうとするため、骨が脆くなりやすくなります。
単に骨が脆くなるだけでなく、骨を溶かした際に一緒に出てくるリンという物質は、心筋梗塞の発症を増やしたり、腎機能低下を引き起こすと言われています。
腎臓病のことのミネラル異常を「CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)」と呼びます。
貧血になる
腎臓は、エリスロポエチンと言うホルモンを分泌します。
エリスロポエチンは骨髄という血液を作る臓器に作用して血液を作らせる役割があります。
腎臓の働きが悪くなるとこのエリスロポエチンが不足して、貧血になります。
腎機能が低下して起きる貧血を「腎性貧血(じんせいひんけつ)」と言います。
腎性貧血は、単に貧血症状が起きるだけでなく、心臓や腎臓を障害するので、腎臓が悪くなると定期的にエリスロポエチンを補充する治療を行います。
腎性貧血について詳しく知りたい方は「腎臓と貧血」の記事をご参照ください。
その他
代表的な物を色々挙げましたが、その他に腎臓が悪くなると以下のような異常が起きます。
- 腸内環境が乱れる
- 睡眠の質が落ちる
- 頻尿になる など
腎臓が悪くなると、薬が増えていくのは全身に様々なことが起きるのが原因です。