カリウムの治療
まず最初にお伝えしたいこと
そのカリウム治療は本当に必要なのか?
慢性腎臓病になるとカリウムが溜まりやすくなるので、治療が必要になることがあります。
ただし、中にはカリウムの治療が不要な患者さんもいて、あくまで目安ですが、以下のような患者さんではカリウム制限が不要なことが多いです。
- 腎臓病のステージがまだ進んでいない(ステージ3もしくは4前半)
- 腎臓病の原因が糖尿病以外
- カリウムを上げる薬を飲んでいない
慢性腎臓病だと一律強制でカリウム制限を指導され、野菜・果物を食べれない生活を送ってしまうケースが多いと日々感じています。
カリウムそのものは腎臓を障害せず、逆に血圧を下げたり、骨を強くする効果も期待出来ます。
慢性腎臓病だから一律にカリウムを制限するのではなく、定期的に血液検査でカリウムの値をみて、適切なカリウムの量を検討していく必要があります。
カリウムとは
カリウムは野菜や果物に含まれるミネラルの一種です。
細胞にとって必要な圧を維持する働きや、体にある余分な塩分を体の外に出す働きがあり生命の維持のために必要な栄養素です。
多すぎても少なすぎても良くなく、慢性腎臓病の場合は体に溜まることで時折問題になります。
高カリウム血症とは
腎臓病が進むと、尿からカリウムが排泄されなくなり、体内にカリウムが溜まり、「高カリウム血症」の状態となります。
高カリウム血症の状態が悪くなると、突然死を引き起こす不整脈・心停止の原因となります。
あくまで目安ですが、カリウムの値が6.5mEq/L以上になると心停止の危険性が上がり、心電図などで心臓に異常な脈を認めるようになります。
そのため、カリウムの値を5.5mEq/L以下にするように食事の調整をしたり、薬を飲んだりします。
高カリウム血症の症状
症状としては以下のようなものがあります。
- 息切れ(19.8%)
- 脱力(18.6%)
- 意識障害(7.8%)
- 失神(5.4%)
- 無反応(4.2%)
- その他(43.1%)
心電図の検査で以下のような所見がでます。
- テント状T波(34.5%)
- 非特異的ST変化(33.3%)
- ST上昇(4.2%)
- 第1度房室ブロック(16.7%)
- 心室内伝導障害(11.3%)
- 脚ブロック(6.0%)
- 徐脈(4.2%)
- 洞停止(1.8%)
*参考文献:Acad Emerg Med 2008;15:239-249
高カリウム血症の治療
高カリウム血症の治療は以下の2つがあります。
- カリウム制限
- カリウムを下げる薬
カリウム制限
カリウムを多く含む食事を制限することで、カリウムが体に溜まらないようにします。
カリウムを多く含む食事として、レンコンやカボチャなどの野菜類、バナナなどの果物、干し椎茸、芋類、豆類などがあります。
これらを食事を食べるときは、茹でこぼしたり、水にさらしてカリウムを落としてから食べるようにします。
カリウムを下げる薬
腸でのカリウムの吸収を抑えて、体にカリウムが入らないようにする薬を飲んで治療します。
具体的には以下のような薬があります。
- ケイキサレート(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)
- アーガメイトゼリー(ポリスチレンスルホン酸カルシウム)
- ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物) など
ロケルマは2020年に発売された新薬で非常に効きがよく、この薬で多くの患者さんが野菜・果物に制限が不要になっています。
ただし、薬の値段がかなり高いのが難点です。
管理人医師の考え方(私見)
ここからはこの記事を書いている管理人医師の考え方について書きます。
- カリウム制限は本当にカリウムが上がりやすい食材に絞る。
- カリウムを下げる薬は積極的に使う。
カリウム制限については、野菜・果物を一律に制限するのではなく、アメリカの腎臓の学会誌に掲載されたレビューを参考に影響の大きい以下の4つから制限していきます。
- 野菜ジュース
- ベジタブルソースなどの液体
- イモ類
- ドライフルーツ・バナナ
まずこの4つの制限をしてみて血液検査を行い、カリウムの値を評価して更なる制限が必要かを検討します。
また、カリウムを下げる薬はカリウムが含まれる野菜や果物の制限減らすために沸点を低くして使っています。
野菜や果物の制限は食物繊維やビタミンの摂取を減らしてしまいます。
カリウムを下げる薬は昔は何かと便秘が起きたりしていたのですが、薬の改良も進んでいるのでうまく薬を使って治療するにようにしています。
さて、次回はカリウムと同じくらい注意が必要なリンというミネラルについてです。
あまり聞いたこともない方もいらっしゃいますが、非常に重要な知識ですので是非お読みください。
この記事を書いた人
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