腎臓辞典

腎臓リハビリテーション

腎臓リハビリテーションとは

腎臓リハビリテーションとは、腎臓病、透析患者さんに対して行われる運動を中心としたプログラムのことです。

腎臓病の患者さんにおける身体機能の低下を予防するだけでなく、腎機能を高めたり、糖尿病や心臓など腎臓以外の臓器の状態をよくするため行われます。

腎臓リハビリテーション学会で認められた正式なリハビリテーションで、腎臓リハビリテーションガイドラインという標準書があり、腎臓リハビリテーション指導士という資格もあります。

腎臓リハビリテーションの効果

腎臓リハビリテーションの効果は主に2つあります。

  1. 身体機能を守る
  2. 腎臓を保護する

特にリハビリテーションも腎機能を高める効果には期待が集まっており、近年世界中からポジティブな報告が出てきています。

腎臓病は一度悪くなると、元に戻らないという言われており、薬の治療も限られるため新しい腎臓病の治療として注目されています。

特に高齢化の日本では、腎臓の治療として行われいる食事制限により身体機能が落ちて寝たきりになってしまうという出来事が問題視されており、高齢の患者さんには食事制限をするのではなく、運動をしていこうという流れがあります。

運動が腎臓に与える影響とメカニズム

運動が腎臓に与える影響のメカニズムとして主に以下の3つが考えれます。

  1. 筋肉の増加
  2. 有酸素運動
  3. 腎血流の改善

①については筋肉を保つことでカルボニル物質という血圧や血糖値を悪くする物質を減らし、筋肉が分泌するマイオカインという物質が腎臓を守る可能性があると考えられています。

②については有酸素運動により酸化ストレスが減り、 酸化ストレスを減らすことで腎臓の血流や腎臓を保護する可能性があります。

③については腎静脈と呼ばれる箇所のうっ滞が、運動によって改善して腎臓を保護すると考えられています。

腎臓リハビリテーションの対象

腎臓リハビリテーションはほぼ全ての腎臓病の患者さんに推奨される治療ですが、心臓や重度の糖尿病がある場合は、行わない方がよいこともあります。

腎臓リハビリテーションをした方が良い人

腎臓病の軽症の患者さんから、透析の患者さんまですべての患者さんが腎臓リハビリテーションの対象です。

一番の対象は、ご高齢で、筋力や日常生活を行う力が減っている患者さんです。

腎臓病だと筋肉や骨がもろくなり、身体機能が7割程度に下がっているためリハビリテーションを行う必要があります。

また、腎臓リハビリテーションには腎臓を守る効果も期待されており、比較的若い腎臓病の方でも推奨されます。

腎臓リハビリテーションをしない方が良い人

心臓の病気、重度の糖尿病など腎臓以外の臓器に合併症がある場合、腎臓リハビリテーションを行わない方が良いこともあります。

絶対禁忌(絶対行わない方がよい)、相対的禁忌(行わない方がよい)、運動中の中止基準を腎臓リハビリテーションのガイドラインを参考に以下のようにまとめてみました。

<絶対禁忌>

  • 虚血性心疾患(2日以内の急性心筋梗塞、内科治療で安定していない不安定狭心症etc)
  • 不整脈(症状の訴えがあり、血圧などが安定していないなどコントロール不良の不整脈etc)
  • 心不全(コントロール不良で症状がある心不全)
  • 弁膜症(症候のある大動脈弁狭窄症など)
  • 意思疎通の行えない精神疾患
  • 急性大動脈解離
  • その他(急性の肺塞栓症または肺梗塞、急性の心筋炎または心膜炎など)

<相対的禁忌>

  • 虚血性心疾患(左冠動脈主幹部の狭窄 etc)
  • 不整脈(頻脈性不整脈または徐脈性不整脈、高度房室ブロック etc)
  • 弁膜症(中等度の狭窄など)
  • 重度高血圧(収縮期血圧200mmHg以上、拡張期血圧110mmHg以下)
  • 電解質異常
  • その他(肥大型心筋症またはその他の流出路狭窄、運動負荷が行えない精神的・身体的障害など)

<運動負荷試験の中止基準>

  • 症状:胸痛、呼吸困難、失神、めまい、ふらつき、下肢疼痛
  • 兆候:チアノーゼ、顔面蒼白、冷汗、運動失調
  • 血圧:血圧低下、異常な血圧上昇
  • 心電図:明らかな虚血性変化、調律異常(異常な頻脈・徐脈、心室頻拍、心房細動など)

腎臓リハビリテーションの検査

腎臓リハビリテーションを行って良いかを決めるために事前に以下のリスク評価の検査を行います。

  • 血液検査
  • 心電図
  • 胸部レントゲン
  • 血圧脈波検査
  • (心臓病があれば)心エコー、負荷心電図
  • (糖尿病があれば)眼底検査、神経障害の検査、足病変の観察 など

腎臓リハビリテーションの内容

ストレッチ、有酸素運動、「レジスタンス運動」と呼ばれる簡単な筋肉トレーニングの3種類を中心に行います。

ストレッチ

柔軟体操は、身体の柔軟性を高めるだけでなく、動かしている各部位周囲の血行を促進させます。

一般的なストレッチを週2-3日で行うのが望ましく、日常で空いている時間にストレッチをすることが望ましいです。

有酸素運動

有酸素運動とは、水泳、サイクリング、ウォーキングなどの運動の、筋肉を使うときのエネルギーで酸素を使う運動です。

心地よく息が切れる程度の負荷の負荷で、ある程度の時間をかけながら行います。

有酸素運動によって、全身の筋肉が酸素とエネルギーを使用することで基礎代謝の向上や心肺機能の向上が期待できます。

個人の体力によって、強度・頻度を決めていきますが、腎臓リハビリテーションガイドラインでは「1回につき20-60分、1日あたり1-2回、週3-5日程度の頻度」で行うことを推奨しています。

種目はどのようなものでよく、当院では、患者さんの好きな種目を決めてやって頂いています。

レジスタンス運動

レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動で、スクワットや筋力トレーニングなどの運動のことです。

個人の体力によって、強度・頻度を決めていきますが、腎臓リハビリテーションガイドラインでは「1セットで15回程行える負荷で、各種目1セット、週2-3日の頻度」から始めることを推奨しています。

徐々に体力がついてきたら、セット数、負荷の量を増やしていきます。

当院ではバーベルなどの負荷の強い機材は使用せず、自分の体重やゴムバンドなどで負荷をかけるトレーニングをおすすめします。

具体的な腎臓リハビリテーションの動画

準備体操

身体機能が低下してくると、若い頃は運動することに抵抗がなかった方でも体を動かすのが億劫になりがちです。まずは、簡単に家でも手軽にできる準備体操からはじめていきましょう。こちらの準備運動は、椅子を使って5分程度の短時間で手軽に行えるプログラムを紹介しています。日々の生活のちょっとした隙間時間に実施できますので継続しやすく、体を動かすことに慣れてもらうことを目的にしています。それでは、早速はじめていきましょう。

上肢の軽い体操とストレッチ

ストレッチと軽い運動を組み合わせることで、身体の各関節の柔軟性を高めるだけでなく、動かしている各部位周囲の血行を促進させます。このビデオでは、頸のストレッチと肩・肩甲骨の軽い運動をし、頸から肩にかけてほぐしていきます。そして、身体の中心(体幹)もゆっくりとストレッチし、更に腰回りの筋肉まで伸ばしていきます

下肢の軽い体操とストレッチ

こちらのビデオでは、下肢の軽い体操とストレッチをおこなっていきます。主に、股関節や膝関節、足の関節のストレッチを十分実施することで、各関節の痛みを和らげたり動かしやすくします。特に、変形性膝関節症の方や足の筋力が低下し、バランスを崩しやすい方は膝関節と足首の関節をストレッチし、軽い運動をしていきましょう。足の筋肉を積極的に動かすことで、足だけでなく身体全体の血液の循環を促進しますので、足のだるさやむくみにも良い効果があります。

寝ながら行うストレッチ

このビデオでは、全身を伸ばすバンザイ運動や足の各部位のストレッチをゆっくりと時間をかけておこないます。運動を習慣化したいけど、あまり運動をする気分にならない時や、体の調子がすぐれないため動きたくない時に、手軽に寝た状態でストレッチをするだけでも効果があります。寝ながらのストレッチは、ビデオを視聴しながら同じようにストレッチするだけ。その日の体調により、運動方法を選択して運動を習慣化していきましょう。

レジスタンス運動

レジスタンス運動とは、筋力トレーニングのことです。レジスタンス運動を行うことで、筋力量を増やして、筋力をつけることができます。また、筋持久力を向上させると怪我をしにくい身体になります。基礎代謝が向上することで、痩せやすく太りにくなりますので、体重管理もしやすくなるメリットがあります。レジスタンス運動の頻度は、週に2〜3回行なうことを目標に実施していきましょう。

上肢のセラバンド体操

セラバンドを使用した運動は、何通りもある筋力トレーニングの中でも筋肉を部分的に強化するという点で理想的な方法です。セラバンドの負荷を選ぶことができ、鍛えたい部位によって負荷の変更が可能です。ゴムバンドを使用していますので、筋肉を痛めにくいというのが特徴です。こちらのビデオでは、主に上半身の各部位の筋力を強化する運動をおこなっています。上肢を様々な方向に動かすことによって鍛えられる筋肉の部位が変わります。

下肢のセラバンド体操

セラバンドを使用した下肢の筋肉トレーニングです。まずは、股関節周囲筋を鍛えます。股関節周囲筋を強化することで、転倒予防や歩行が安定しやすくなります。次に、膝関節を伸ばす運動をし、太ももの前面の筋肉アップしましょう。立った状態で最も使用する重要な部位の筋肉ですので、しっかりと鍛えていきましょう。

はじめのうちは、運動回数が少なくても良いですので、徐々に実施回数を増やしていき下肢筋肉のアップをしていきましょう。