
腎臓の難病・稀な病気

微小変化型ネフローゼ
微小変化型ネフローゼとは
微小変化型ネフローゼとは、原因不明のメカニズムで尿に大量のタンパクが漏れる病気です。
比較的小児〜成人にかけての若い人に起きやすい病気です。
治療を行っても30-70%再発するのが特徴です。
微小変化型ネフローゼの症状
血液中のタンパク質が少なくなることで症状が起き、以下のような症状が有名です。
- むくみ
- 日単位の体重増加( 1週間に数kg増えることもあります)
- 下痢
- 尿の強い泡立ち
- (重症化すると)呼吸苦や尿量低下 など
微小変化型ネフローゼの検査
まず一般的な以下の検査を行います。
- 血液検査
- 尿検査
- 画像検査
加えて診断をつけるために腎生検という腎臓に針を指して組織を採取して評価する検査を行います。
微小変化型ネフローゼの治療
微小変化型ネフローゼの治療として以下のようなものを行います。
- ステロイド
- シクロスポリン
- リツキシマブ
- 保存的加療 など
ステロイド、シクロスポリン、リツキシマブは免疫を抑えるお薬です。
治療経過・再発に応じて使い分けを行います。
加えて、食事療法を中心とした保存的加療を行います。
*微小変化型ネフローゼにおける注意点
微小変化型ネフローゼの患者さんへの加療のお勧めとして、「タンパク尿を見つける試験紙を自宅に常備すると良い」と伝えています。
微小変化型ネフローゼが再発した際には、早急に治療介入すると治療が効きやすくなります。
試験紙を自宅に常備してちょっと体の異変があったときに医療機関に行かなくても調べることができるようにしておきましょう。
*リツキシマブ(リツキサン)について
ステロイド、シクロスポリンで再発を繰り返す患者さんに対して、近年リツキシマブ(リツキサン)という血液内科領域で使用されていた薬が有効な可能性が出てきて注目されています。
リツキシマブは元々、悪性リンパ腫という病気に対して実際使用されている薬剤です。
再発を繰り返す微小変化型ネフローゼに対して効く事が近年分かり、小児科領域では保険収載もされて積極的に使用されている薬剤です。
成人例でも治療成績が報告されるようになり、2017年のガイドラインにも「リツキシマブは、成人ネフローゼ症候群に対する尿蛋白減少・腎機能低下抑制効果のエビデンスは十分ではないが,頻回再発型やステロイド抵抗性の症例に有効な可能性があり,考慮してもよい」と記載されています。
一方で、まだまだわかっていない事も多い治療法です。特に副作用・長期的な投与による予後に関してはわかっておりません。
副作用としては、発熱、アナフィラキシーショック、悪心・嘔吐、間質性肺炎、進行性多巣性白質脳症などの重篤な副作用も知られています。
リツキシマブを使う最大のメリットは免疫抑制薬とりわけステロイドの投与量を減らす事が出来る事です。
ステロイドは治療薬として抜群の薬ですが、副作用が多く、なるべく投与量を減らしてコントロールすることが望ましい薬剤で、リツキシマブを併用してステロイドを最小限(もしくは休薬)にする戦略になります。
膜性腎症
膜性腎症とは
膜性腎症とは、糸球体に沈着物がつくことにより異常が起きて、体のタンパクが漏れる病気です。
比較的稀な病気ですが、高齢で尿タンパクが出ているときには考えられる病気です。
膜性腎症の原因
膜性腎症は原因によって一次性と二次性に分けることが出来ます。
- 一次性:他に病気がなくて起きる
- 二次性:他に病気があり起きる
一次性の膜性腎症の原因はよくわかっていません。
二次性膜性腎症の原因となる他の病気とは多岐に渡り、以下のような原因が関わっている可能性があります。
- 感染症(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、マラリアなど)
- 薬剤(ペニシラミン、プロベネシドなど)
- 悪性腫瘍(大腸がん、肺がん、乳がんなど)
- 膠原病(SLE、Sjogren症候群、MCTD、サルコイドーシス、橋本病、ANCA関連疾患など) など
膜性腎症の症状
膜性腎症は、尿からタンパクが漏れ、血液中のタンパクが不足することで起き、具体的には以下のような原因が考えられます。
- 浮腫
- 体重増加
- 尿量低下 など
膜性腎症の検査
まず最初に以下の3つの検査を行います。
- 血液検査
- 尿検査
- 画像検査
身体のタンパク質が不足している状態であれば診断をつけるために腎生検という腎臓の組織をとる検査を行います。
膜性腎症の予後
膜性腎症の予後は10年後に透析や移植が必要になる可能性が約10%程度と言われています。
特に、男性・高齢・蛋白尿が多い・腎機能低下があるという場合は予後が悪いと言われています。
膜性腎症の治療について
治療は一次性なのか二次性なのかで異なります。
一次性膜性腎症の治療
一次性膜性腎症の場合は以下のような治療を行います。
- 重症例:ステロイドなどの免疫抑制薬
- 軽症例:免疫抑制薬を使わず他の薬で保護的に治療
免疫抑制剤を使うかどうかの判断材料として以下のようなものを考慮に入れます。
- タンパク尿の量
- 腎臓の組織学的な評価
- 年齢
- 患者さんの合併症 など
膜性腎症の場合、免疫抑制が効いてくるのに数ヶ月かかるため辛抱強く治療をしていきます。
軽症例の場合は、腎臓を保護する降圧薬などを使用しながら自然軽快を期待して経過をみていくこともあります。
二次性膜性腎症の治療
二次性膜性腎症の場合は、原因となる疾患の治療を中心に行います。
特に膜性腎症の原因を調べている最中に癌が見つかることもあり、治療として癌の治療を行うこともあります。
顕微鏡的多発血管炎
顕微鏡的多発血管炎とは
MPO-ANCAという血液中の白血球の一部を攻撃してしまう自己抗体(じここうたい)が出来て、全身の細かいレベルでの血管に炎症を起こして肺、腎臓、神経、関節などを障害する病気です。
顕微鏡でしか分からないぐらい細かいレベルの血管で全身に起きる炎症のため顕微鏡的多発血管炎と呼びます。
顕微鏡的多発血管炎の原因
原因は不明です。
稀に薬剤で起きるものもあります。
顕微鏡的多発血管炎の症状
症状として以下のようなものがあります。
- 発熱
- 倦怠感
- 食思不振
- 血痰
- 痺れ
- 関節痛 など
顕微鏡的多発血管炎は月単位で障害が進行していきます。
顕微鏡的多発血管炎の検査・診断
検査として以下のような検査を行います。
- 血液検査(クレアチニン、CRP、ANCA値 など)
- 尿検査(蛋白尿、血尿 など)
- 画像検査(胸部CT、腎臓エコーなど)
その上で最終的に、腎生検という検査を行って、腎臓の組織を顕微鏡的に評価して、細かいレベルの血管に起きる炎症を見つけて障害を評価・診断をします。
また肺にも所見がでることがあり、胸部CTをとって、肺胞出血、間質性肺炎などの所見がないかをします。
顕微鏡的多発血管炎の治療
顕微鏡的多発血管炎は、自分の身体を自分の免疫物質が攻撃してしまうため起きる病気なので、自分の免疫力を抑える治療を行います。
免疫抑制療法といって、ステロイドという薬を中心に、必要に応じて様々な免疫抑制剤を使用します。
詳しく免疫抑制剤について知りたい方はクリックしてください。
少し難しい話になりますが、顕微鏡的多発血管炎の治療には2種類のフェーズがあって、「寛解導入(かんかいどうにゅう)」、「寛解維持(かんかいいじ)」があります。
寛解とはBVASという血管炎に伴う臓器の障害を定量化したスコアが4週間の間0点である状態を言います(定義は明確には決まっていないのですが・・・。)。寛解の判定はざっくり3ヶ月〜6ヶ月後に判断されることが多いです。寛解にさせる治療(=炎症を抑え込む治療)が寛解導入、寛解を維持させる治療(=再発しないようにする)が寛解維持と考えていただけばと思います。
ステロイド(プレドニン)
強力な炎症を抑える働き、免疫を抑える働きを持つお薬です。免疫を抑える意味合いで歴史も深く効果も抜群に良い薬です。一方で副作用として糖尿病、高血圧、脂質異常症、感染症、食欲亢進、胃が荒れる、骨がもろくなる、顔が丸くなるなどの副作用があります。
顕微鏡的多発血管炎と診断して、点滴のステロイドもしくは内服のステロイドで治療を開始します。比較的軽症かつ高齢者で薬の副作用が心配な時は内服で治療を開始します。その他の場合、点滴で大量のステロイドを3日間投与するステロイドパルス療法を行い、その後に内服のステロイドによる治療を開始します。
内服、点滴どちらかにするかの明確な基準は「臨床重症度・年齢・透析の有無による治療法の選択」、「臨床所見のスコア化による重症度分類」などを参考にスコアリングして決めていくのですが、あくまでこれらは目安であり、患者さんの状態や検査、病理の結果などで総合的に判断します。
ステロイドは治療の効果をみて徐々に減量していき、伴って副作用は少なくなっていきます。生涯かけて投与されたステロイドの量と合併症のリスクは関係があると言われているため可能な限り最小限のステロイドで治療したいと医師は考えていますが、顕微鏡的多発血管炎の場合、再発する頻度が高いので状態が安定していても、ステロイドは完全に中止にせず1日1錠程度は継続して内服してもらっています。
顕微鏡的多発血管炎はこのステロイドに加えて、もう1種類の免疫抑制薬を加えて治療するのが一般的です。ただし高齢な場合、感染症のリスクが高い場合、炎症が比較的軽微である場合など強い免疫抑制をかけるメリットより副作用のデメリットが上回る場合はステロイド単独で寛解導入を行うこともあります。
シクロホスファミド(エンドキサン)
一般的に、顕微鏡的多発血管炎はこのステロイドに加えて、シクロホスファミドという免疫抑制薬を使用して治療します。このシクロホスファミドという薬は点滴と内服があるのですが、点滴の方が内服より安全性が高いと言われており、4週間に1度点滴でシクロホスファミドを投与して6ヶ月程続けます。(間隔、投与期間、投与量は様々な方法があります。)
シクロホスファミドの短期的な副作用としては感染症、骨髄抑制、出血性膀胱炎、悪心・嘔吐、口内炎、脱毛などがあります。非常に稀ですが、間質性肺炎、心筋障害などがあり肺、心臓は投与前に検査しておくこともあります。長期的には性腺機能障害、悪性腫瘍などが報告されています。特に問題になるのは骨髄抑制(こつずいよくせい)であり、身体に必要な血液の成分が作られなくなり白血球という免疫を司る成分が減るため、その場合エンドキサンを中止したり、減量したりします。
リツキシマブ(リツキサン)
ステロイドに加えて使用される免疫抑制薬でもう一つ注目されているのが、リツキシマブという免疫抑制薬です。リツキシマブは腎臓領域でも近年注目浴びているの免疫抑制薬です。また出たばかりの新薬であり、数十年の経過でのメリット・デメリットは未だ明らかになっていないのが難点ですが、海外で行われてたRAVE試験、RITUXVAS試験では先程触れたシクロホスファミドと同等の治療効果があることが報告されました。また何度も再発しているような症例では、シクロホスファミドよりリツキシマブの方が優れている可能性があるとも考えられています。
ただし、日本人を対象とした科学的根拠はまだまだ乏しく、海外より高齢者が多いことや血管炎の型が海外と異なることなどから現段階では、合併症などの観点からシクロホスファミドが使用しづらい時や、再発例などでシクロホスファミドの次の手として使用される薬剤として認識されています。また寛解導入としてもMAINRITSAN試験で後述するアザチオプリンにとって替わる可能性が指摘されています。
投与方法としては、寛解導入として、1回量375mg/m2を4週連続で投与する方法がよく使われています。また寛解維持で使用する使い方も模索されています。例えば500mg/m2を1日目、15日目、それ以降半年に1度投与する方法などが過去に報告されています。
副作用としては投与中〜翌日までに起きる発熱、悪心、頭痛、掻痒感、咳などのInfusion Reactionが大半の症例で起きるので、点滴前に予防薬を投与します。特に初回のリツキシマブ投与に起きやすいと言われています。また感染症(肝炎、結核、ウイルス感染)などがある場合は慎重投与とされて感染症の治療を先に行います。その他、血球減少という身体に必要な血液の成分が作られなくなる状態になることもあります。非常に稀ですが、PMLという意識障害、麻痺、言語障害などを認める重篤な合併症も報告されています。
アザチオプリン(イムラン)
アザチオプリンは主に寛解維持としてステロイドに加えて使用される薬です。寛解維持としては比較的よく使用される薬で、だいたい体重×2mg/日で使用される薬で18-24ヶ月は内服を続けます。白血球という免疫を司る血球が3000以下の場合、妊娠している場合、過敏症がある場合は使用することが出来ません。また尿酸薬を飲んでいる方は休薬することが望ましいと言われています。
副作用としては骨髄抑制、肝機能障害、感染症、間質性肺炎などがあるので、投与を開始した際は1-2週間ごとに血液検査を行う事が望ましいと考えられています。
顕微鏡的多発血管炎の予後
顕微鏡的多発血管炎は1年で半数の人が死亡するとも言われていた程非常に予後が悪い病気でした。しかし
近年ステロイドやその他免疫抑制薬による治療が確立して、現在では1年で死亡する率は10%程度まで減るようになってきました。
とはいえ、それでも予後が悪い疾患のため治療や治療の副作用のコントロールを注意深く行っていく必要があるでしょう。
多発性骨髄腫による腎障害
多発性骨髄腫とは
多発性骨髄腫とは、血液癌の一種です。
骨髄という血液成分を作る細胞に形質細胞という細胞が骨髄の中に異常に繁殖して、赤血球、白血球、血小板などを体に必要な血球を正常に作る事が出来なくなる病気です。
多発性骨髄腫と腎臓
多発性骨髄腫では、骨髄内に異常に繁殖した形質細胞からMタンパクという全く役に立たないタンパクが大量に産生されます。
このMタンパクにより腎臓に障害をうけることがあります。
多発性骨髄腫の約2-5割に腎臓の障害が起きて、約1割が透析が必要になります。
多発性骨髄腫が腎臓を障害するメカニズムに関しては、大まかに以下の3つのメカニズムが関わっていることが多いです。
- 尿細管を障害する。
- 糸球体を障害する。
- カルシウムの値が増えすぎる。
多発性骨髄腫による腎障害の検査
検査としてはまず以下のようなものを行います。
- 血液検査(血球検査、タンパク、カルシウム、腎機能の評価など)
- 尿検査(タンパク尿、Mタンパクなど)
- 画像検査(腎臓エコー)
その後、診断をつけるために状況に応じて以下の検査を行います。
- 骨髄検査(骨を細胞レベルで調べる検査)
- 腎生検(腎の組織を細胞レベルで調べる検査)
多発性骨髄腫の治療
多発性骨髄腫の治療には、以下のような治療があります。
- 抗がん剤を使用した薬物療法
- 造血幹細胞移植
年齢などどの治療を選択するかが決まります。
多発性骨髄腫の治療法は近年ドンドン進化しておりボルテゾミブによる腎保護効果、透析による不要なタンパク質を取り除く治療など様々な治療法があります。
*多発性骨髄腫と腎臓の最近のトピック
多発性骨髄腫より不要なタンパク質の量が少なく、症状が出ていない病気をMGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)といいます。
基本的にはMGUSに対して、治療を行わない流れだったのですが、MGUSでも腎障害が進行する例(MGRS)の報告があり血液検査や尿検査で腎障害を示唆する所見があれば治療を行った方が良いのではないかという意見が出ています。
アルポート症候群
アルポート症候群とは
アルポート症候群は糸球体の基底膜と呼ばれる箇所にあるⅣ型コラーゲンに異常が起きる遺伝性の腎疾患です。
IV型コラーゲンはα1-α6鎖というもので構成され、その中のα3,4,5のいずれかに遺伝子変異を起きて発症します。
アルポート症候群の症状
アルポート症候群の症状として以下のようなものがあります。
- 難聴
- 視力低下
- 血尿 など
難聴、視力低下はアルポート症候群の症状で有名ですが、起きないこともあります。
男性では腎機能障害が起きやすく、30代頃に透析が必要になることがあります。
アルポート症候群の検査
まず、血液検査、尿検査、腎臓エコー検査を行います。
その後、アルポート症候群の診断のために、腎生検という腎臓の組織を細胞レベルで調べる検査を行います。
アルポート症候群の診断
アルポート症候群の診断基準として以下のような基準があります。
- 主項目に加えて副項目の1項目以上を満たすもの。
- 主項目のみで副項目がない場合、参考項目の2つ以上を満たすもの。
主項目と副項目としては以下のようなものがあります。
- 主項目:持続性血尿
- 副項目:Ⅳ型コラーゲン遺伝子変異、Ⅳ型コラーゲン免疫組織化学的異常、糸球体基底膜特異的電顕所見
- 参考項目:腎炎・腎不全の家族歴、両側感音難聴、特異的眼所見、びまん性平滑筋腫
アルポート症候群の治療
残念ながら根本的治療はありません。
一般的な慢性腎臓病に対して行われる以下の治療を行う必要があります。
- 腎臓の食事療法
- 腎臓の運動療法
- 腎臓の薬物療法
腎臓が悪くなってしまった場合は腎代替療法(透析や移植)を行います。
特に移植については、移植後抗基底膜腎炎と呼ばれる病気の発症の可能性はあるものの、比較的予後は良好と報告されています。
アルポート症候群と遺伝
アルポート症候群の遺伝性については以下の2種類があります。
- X連鎖型(80%)
- 常染色体型(20%)
X連鎖の遺伝子は男性・女性の性別を決める遺伝子の事を指します。常染色体は性別に関与しない遺伝子のことを指します。
X連鎖型
アルポート症候群の約80%がX連鎖型の遺伝子変異です。
IV型コラーゲンのα5鎖に遺伝子変異があり、2つのパターンに分けることができます。
- 男性のX連鎖型
- 女性のX連鎖型
X連鎖型(男性の場合)
男性で発症すると重症になりやすく70%の方が30歳までに透析に至り、予後不良と言われています。
X連鎖型(女性の場合)
男性に比べて進行が遅く、透析に至る場合やそうでない場合があります。
難聴や蛋白尿が持続している場合は要注意と言われています。
常染色体型
IV型コラーゲンのα3,4鎖に遺伝子変異があります。
常染色体型には2種類のパターンがあります。
- 優性型(ゆうせいがた)
- 劣性型(れっせいがた)
常染色体優性型
常染色体の中では比較的予後が良好で、透析に至るのは大方50歳を過ぎてからと言われています。
常染色体劣性型
常染色体の中では比較的予後が不良で、透析に至るのは早くて10代頃と言われています。
アルポート症候群の遺伝性と腎生検の所見について詳しく知りたい方はこちらをクリニックしてください。(専門家向けです。)
腎生検で採取した腎組織をIV型コラーゲンα鎖で染色して、遺伝子異常がないかを判断します。
糸球体の基底膜とボウマン嚢・皮膚で存在しているIV型コラーゲンの型が異なります。
- 糸球体基底膜:α3/4/5
- ボウマン嚢・皮膚:α5/5/6
常染色体型に対して染色をした時に以下の染まり方をします。
- 基底膜は染まらない:α3.4鎖に異常があるため
- ボウマン嚢は染まる
*本当は常染色体優性か劣性かで所見が異なる。
一方でX連鎖型劣性に対して染色をした時に以下の染まり方をします。
- 基底膜は染まらない:α5鎖に異常があるため
- ボウマン嚢は染まらない:α5鎖に異常があるため
*本当は男性と女性で所見が異なる
膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
膜性増殖性糸球体腎炎の説明をする前に
膜性増殖性糸球体腎炎とは、異常に理解をするのも説明するのも難しい病気と言われています。
なぜなら膜性増殖性糸球体腎炎は、「形」と「病名」の概念がごちゃまぜになっているためです。
膜性増殖性糸球体腎炎は特徴的な病理組織像(細胞レベルでの変化)を示す病気の総称です。
つまりどのような病気が原因であってもこのような形をとれば膜性増殖性糸球体腎炎です。
一方で、病名として膜性増殖性糸球体腎炎という言葉を使うこともあります。
これは膜性増殖性糸球体腎炎の中で、一次性と呼ばれる原因不明の病態で起きる膜性増殖性糸球体腎炎のことを指します。
膜性増殖性糸球体腎炎という言葉が「形としての膜性増殖性糸球体腎炎」のことを言っているのか「一次性膜性増殖性糸球体腎炎」のことを言っているのか解釈がかわるので注意が必要です。
このページでは「形としての膜性増殖性糸球体腎炎」の話をしています。
膜性増殖性糸球体腎炎とは
慢性増殖性糸球体腎炎は、糸球体に以下の細胞レベルでの変化が起きる病気のことを指します。
- メサンギウム細胞増殖
- メサンギウム基質の増加と分葉化
- 糸球体係蹄壁の肥厚により血管腔の狭小化
膜性増殖性糸球体腎炎の症状
症状としては、以下のようなものがあります。
- 血尿、蛋白尿
- 浮腫
- (重症になると)呼吸苦 など
症状が急にでるものもあれば、ゆっくり出てくるものもあります。
膜性増殖性糸球体腎炎の検査
膜性増殖性糸球体腎炎の検査としてまず以下のようなものを行います。
- 血液検査
- 尿検査
- 画像検査
最終的には腎臓の組織を調べる腎生検という検査を行い診断をします。
膜性増殖性糸球体腎炎の原因
慢性増殖性糸球体腎炎の原因として以下の2つのパターンに分けることが出来ます。
- 1次性膜性増殖性糸球体腎炎
- 2次性膜性増殖性糸球体腎炎
背景に何かの原因があって起きるものを2次性と呼び、背景の原因として以下のようなものがあります。
- 慢性感染症(特定の細菌感染症、肝炎ウイルス、真菌、寄生虫など)
- 自己免疫疾患(IgA腎症、関節リウマチ、ループス腎炎、シェーグレン症候群など)
- 異常なタンパク血症(慢性リンパ性白血病、PGNMID、イムノタクトイド糸球体症、混合性クリオグロブリン血症など)
- 補体の異常(c3腎症など)
- その他(悪性リンパ腫、悪性黒色腫など)
膜性増殖性糸球体腎炎の病態
膜性増殖性糸球体腎炎のような形をとってしまう病態のメカニズムとして以下のようなものがあります。
- 免疫グロブリン沈着型
- 補体依存型
- 免疫グロブリンでも補体でもない
病態によって原因の追究や予後の予想に繋がる可能性があります。
詳しくは膜性増殖性糸球体腎炎のパターンについて知りたい方はこちらをクリックください。
● 免疫グロブリン沈着型
体の中に慢性的な炎症や異常な免疫活動があり、免疫グロブリンの活動に異常が起きて、腎臓を攻撃してしまうことで起きるメカニズムのことを指します。
このようなメカニズムをとる原因として、主に以下のようなものが考えられます。
- 慢性感染症:特定の細菌感染症、肝炎ウイルス、真菌、寄生虫など
- 自己免疫疾患:関節リウマチ、ループス腎炎、シェーグレン症候群など
- 異常なタンパク血症:慢性リンパ性白血病、PGNMID、イムノタクトイド糸球体症、混合性クリオグロブリン血症など
- その他:悪性リンパ腫、悪性黒色腫など
● 補体依存型
体の補体という免疫を司る機能に何らかの異常があり、補体の第2経路という経路が異常に活性化して起きるメカニズムのことを指します。
このようなメカニズムをとる原因として、主に以下のようなものが考えられます。
- 自分の体を攻撃してしまう自己抗体(C3NeFなど)の存在
- 遺伝子異常(FactorH遺伝子など)
近年、補体依存型の膜性増殖性糸球体腎炎はC3腎症という概念でまとめられるようになりました。
● どちらでもない
免疫グロブリンや補体に異常が無いのに、膜性増殖性糸球体腎炎の形をとる場合を指します。
- 一次性膜性増殖性糸球体
- 内皮細胞障害を来す疾患:糖尿病性腎症、抗リン脂質抗体症候群、悪性高血圧など
- 放射線照射による腎症 など
膜性増殖性糸球体腎炎の治療
1次性膜性増殖性糸球体腎炎では、ステロイド療法を中心とした免疫を抑える薬を使用します。
2次性膜性増殖性糸球体腎炎では、背景の治療を行います。
巣状分節性糸球体硬化症
巣状分節性糸球体硬化症について理解する前に
巣状分節性糸球体硬化症は理解するのも、説明するのも難しい病気と言われています。
理由は、巣状分節性糸球体硬化症は糸球体が病理学的(細胞レベル)で特徴的な形になる病気の総称であり、どのような病気であっても特徴的な形であれば診断になります。
巣状分節性糸球体硬化症の中にも様々な病態があり、病態ごとに原因、治療、予後が異なるため理解が難しくなります。
巣状分節性糸球体硬化症とは
巣状分節性糸球体硬化症とは糸球体が巣状、分節状に硬化していく病気のことを指します。
巣状分節性糸球体硬化症の症状
巣状分節性糸球体硬化症の症状としては、以下のようなものがあります。
- 血尿、蛋白尿
- 浮腫
- (重症になると)呼吸苦 など
症状が急にでるものもあれば、ゆっくり出てくるものもあります。
巣状分節性糸球体硬化症の検査
巣状分節性糸球体硬化症の検査としてまず以下のようなものを行います。
- 血液検査
- 尿検査
- 画像検査
最終的には腎臓の組織を調べる腎生検という検査を行い診断をします。
巣状分節性糸球体硬化症の原因
巣状分節性糸球体硬化症の原因は大まかに2パターンに分けることが出来ます。
- 特発性(原因不明のもの)
- 二次性(背景に何か原因があるもの)
二次性の巣状分節性糸球体硬化症の原因として以下のようなものがあります。
- 遺伝性:α-actinin4、podocin、WT-1、β-integrin、TRPC-6に所見がある場合
- ウイルス性:HIV、パルボウイルスB19などが原因の場合
- 薬剤性:ヘロイン、インターフェロン、リチウム、パミドロン酸などが原因の場合
- 腎臓の構造上の問題:低ネフロン(オリゴメガネフロニア、片側腎無形成、腎異形成、慢性移植腎症など)の異常がある、もしくは正常腎でも腎硬化症、腎動脈塞栓、肥満などの異常がある場合
巣状分節性糸球体硬化症の病態
巣状分節性糸球体硬化症のような形をとってしまうメカニズムを解明するには、巣状分節性糸球体硬化症の細胞レベルでの変化をみる必要です。
「コロンビア分類」という分類を使って以下の5つのパターンに分けることが出来ます。
- collpsingバリアント
- tipバリアント
- cellularバリアント
- perihilarバリアント
- NOS
パターンによって原因・治療・予後が推測出来ます。
① collapsingバリアント
最も予後が悪い分類に属して急激に腎臓が悪くなる可能性があります。
原因として以下のようなものがあります。
- HIV、パルボウイルスB19、EBVのような感染症
- 血球貪食症候群という血液関連の病気 など
② tipバリアント
比較的に治療が効きcollapsingバリアントと比較して予後が良いとされています分類に属します。
原因は原因不明の特発性のことが多いです。
ステロイド療法を含めた免疫抑制薬を積極的に使っていきます。
③ cellularバリアント
比較的に治療が効きcollapsingバリアントと比較して予後が良いとされています分類に属します。
原因は原因不明の特発性のことが多いです。
ステロイド療法を含めた免疫抑制薬を積極的に使っていきますが、時折効果が乏しいこともあります。
④ perihilarバリアント
比較的蛋白尿が少なく、予後が悪くないとされている分類に属します。
腎臓に見合わない血液の量と圧が掛かって負担がのしかかる事が原因で起きます。
原因としては、低形成腎、腎硬化症、肥満、遺伝性などが考えられます。
基本的な治療は腎臓の負担を抑えるような治療を行い、腎臓を保護する血圧の薬であるRAS系阻害薬を中心とした降圧や減量を行います。
⑤ NOS
上記4つに分類されないものです。
巣状分節性糸球体硬化症の予後
病態次第で予後が異なると言われていますが、特発性の巣状分節性糸球体硬化症に場合は20年で半数以上が透析・移植が必要になると言われています。
一方で尿タンパクが少なかったり、ステロイドを使用して治療反応性が良好な場合は、ある程度予後が良いとされております。
常染色体優性尿細管間質性腎疾患(ADTKD)
常染色体優性尿細管間質性腎疾患とは
常染色体優性尿細管間質性腎疾患は、常染色体優性遺伝という遺伝形式をとる遺伝性の腎疾患です。
腎臓の尿細管と間質という場所に障害が起き、数十年単位で進行して透析や腎移植が必要になる病気です。
常染色体優性尿細管間質性腎疾患の症状
常染色体優性尿細管間質性腎疾患の特徴として以下のようなものがあります。
- 若いころから尿酸値が高い
- 若いころから糖尿病がある
- 性器異常がある など
常染色体優性尿細管間質性腎疾患の検査
検査として以下のようなものを行います。
- 血液検査
- 尿検査
- 画像検査 など
腎臓の障害のスピードはゆっくりで、尿タンパクがあまり出ないのが、特徴です。
最終的には腎生検という腎臓の組織を調べる検査で尿細管間質という場所に病変があることを確認した上で、遺伝子の異常を検出することで診断になります。(遺伝子検査を行っても診断につながらないこともあります。)
常染色体優性尿細管間質性腎疾患の病態
常染色体優性尿細管間質性腎疾患では、どの遺伝子に異常があるかで病態が異なり、以下の3パターンが分かっています。
- UKD:ウロモジュリンというタンパク質に関わるUMOD遺伝子の変異
- ADTKD-REN:レニンというホルモンに関わる遺伝子変異
- MKD:ムチン-1という蛋白に関わるMUC1遺伝子変異
- ADTKD-NOS:原因不明
詳しくはこちらをクリックください。
UKD
ウロモジュリンというタンパク質に関わるUMOD遺伝子の変異で起きるタイプで以下の2つの特徴があります。
- 小児期より高尿酸血症、痛風があり、家族にも同様の症状の方がいる。
- 尿所見異常が無いにも関わらず、腎機能障害が進行する。
ウロモジュリンは尿細管上皮細胞機能維持、フロセミド依存性Na-K-2Cl輸送体に関与しているとされており、ウロモジュリンの機能不全で、尿細管上皮が萎縮したり、Na-K-2Clを介して尿酸排泄障害を起こします。
腎機能障害の進行は緩徐で、40-50歳代で末期腎不全(透析、移植が必要な状態)になると考えられていますが、60-70歳代まで腎機能が維持する事もあります。
治療としては痛風の治療と一般的な慢性腎臓病の治療を行ないます。
ADTKD-REN
レニンというホルモンに関わる遺伝子変異のパターンで特徴としては以下の2つが有名です。
- 小児期より高尿酸血症、痛風がある。
- 高尿酸血症に加えて、低血圧、高カリウム、貧血が起きる。
レニンというホルモンが作られず低血圧、高カリウム血症になったり、異常なレニンが尿細管上皮に蓄積されて尿細管障害が起きるとされています。
治療は、なるべく塩分の濃い食生活をする事、ミネラルコルチコイドを内服する事が挙げられます。一方で減塩食、NSAIDs(ロキソニンなど)は避ける必要があります。
MKD
ムチン-1という蛋白に関わるMUC1遺伝子変異起きるパターンで、特徴としては以下の2つが有名です。
- UKDやADTKD-RENで見られる高尿酸血症、低血圧、高カリウム血症は認めない。
- 検尿異常が乏しい。
異常なムチンが遠位尿細管上皮に蓄積されて尿細管障害が起きるとされています。
ADTKD-NOS
遺伝子異常が不明であったり、変異が未知なものはNOSと分類します。
コレステロール塞栓症
コレステロール塞栓症とは
コレステロール塞栓症は、カテーテル手術や外科的手術で血管の処置をした後に出来た血の塊が、腎臓であれば腎臓、消化管であれば消化管に飛んで詰まった先で炎症を起こしたりする事で起きる障害です。
コレステロール塞栓症の症状
症状としては、腎臓の障害が起きて尿量が少なくなったり、浮腫んだりします。重篤になると呼吸が苦しくなったり、毒素が溜まって食欲が無くなったり、意識が朦朧とすることもあります。
腎臓だけではなく、他の臓器にも血の塊が飛ぶ事で以下のような障害を起こします。
- 消化器症状(腹痛・嘔吐など)
- 神経症状(しびれ)
- 皮膚症状(皮疹など)など
コレステロール塞栓症は1週間ぐらいで一気に障害がおきることもあれば、数週間かけてジワジワ起きる場合もあります。
コレステロール塞栓症の検査
検査として、以下のようなものを行います。
- 採血検査(クレアチニン、好酸球、炎症反応など)
- 尿検査(尿蛋白など)
診断は腎生検という腎臓の組織をとってきてそれを顕微鏡で調べる検査を行います。
コレステロール塞栓症の治療
残念ながら、根本的な治療はありません。
コレステロール塞栓症に対する治療法は、「新たな塞栓を防ぐこと」で以下のような治療を行います。
- 抗高脂血症薬
- 抗血小板剤
- 血圧コントロール
- 禁煙
- 血糖コントロール など
可能な限り抗凝固薬や血管内治療を行う事は控えた方が良いと言われています。少量のステロイド療法の報告もありますが、表立って推奨はされていません。
予後は、腎予後、生命予後ともに不良です。
C3腎症
C3腎症とは
C3腎症とは、補体の異常によって起きる腎障害の一つです。
補体とは生体が病原体などを排除する際に活動する免疫の内の一つのタンパク質で、その補体が異常に活性化することで腎障害が起きます。
小児から少年期に多い病気です。
C3腎症の症状
C3腎症の症状として以下のようなものがあります。
- 尿検査異常(尿タンパク、尿中赤血球など)
- 浮腫み
- 体重増加
- (重症になると)呼吸苦 など
C3腎症の検査
血液検査でクレアチニン、補体の値を測定して総合的に評価します。
疑わしいときは腎生検(じんせいけん)という腎臓の組織を採ってきてそれを顕微鏡で評価する検査をします。
C3腎症の原因
補体の第2経路という活性経路(スイッチの入る経路)が異常に活性化していると起きます。
この活性経路が異常に活性化する原因として、自分の体を攻撃してしまう自己抗体(C3NeFなど)の存在や遺伝子異常(FactorH遺伝子など)が挙げられます。
C3腎症の治療
自己抗体が原因ならステロイドなどの免疫抑制療法を行います。
遺伝子異常ならエクリズマブという特殊な治療を行います。(エクリズマブに関しては、現段階で日本では保険適応外です。)
また血漿交換法(けっしょうこうかん)という血液を入れ替える治療が有用である報告もあります。
その他腎臓を守る降圧薬RAS系阻害薬などを投与します。
C3腎症の予後
C3腎症はまだまだメカニズムが解明させていない点も多く、治療法もコンセンサスのある治療はありません。
予後は不良で、無治療の場合10~20年で50~60%が透析や移植が必要な状況になると言われています。
C3腎症の病態
C3腎症は新しく見つかった病気で、膜性増殖性糸球体という病気の中で補体が関与しているものをC3腎症と呼ぶようになりました。
更にC3腎症の中で以下の2つに分けることができます。
- C3腎炎
- DDD:dense deposit病
大きな違いは発症時期で、C3腎炎の方が成人期に発症して、予後はDDDに比べると良いです。
今後この2つのメカニズムを解明することで治療につながる可能性が期待されています。
ファブリー病
ファブリー病とは
ファブリー病とは、身体で分解されるべき物質が分解されず腎臓、心臓、神経、血管などに沈着して数十年単位で臓器に障害を起こす遺伝性の病気です。
近年、治療法も開発されてきており、早期発見をする事で家族の治療にも繋がることが期待されている病気です。
遺伝性疾患で以前は10万人に1人くらいの稀な病気と言われていましたが、実は見つかっていないだけもっと多くの人がいるのではないかと考えられており、現在透析をされている患者さんの100人に1人がファブリー病の可能性があるという説もあります。
ファブリー病の原因
体の細胞内のライソゾームという老廃物を処理する器官にあるα-ガラクトシダーゼが先天的に欠損することが原因です。
結果、GL-2、GL-3、血液型B型糖脂質などの物質が分解できなくなり正常の機能を邪魔することで障害します。
ファブリー病の症状
症状は様々臓器にすることで様々な症状を起こします。
- 腎臓に沈着:尿タンパク、腎不全 など
- 心臓に沈着:心肥大、弁膜症、不整脈 など
- 神経細胞に沈着:痛み、異常な感覚 など
- 皮膚に沈着:被角血管腫(ひかくけっかんしゅ) など
- 汗を分泌する汗腺に沈着:低汗症 など
- 角膜に沈着;角膜混濁 など
- 腸に沈着:下痢、腹痛 など
- 耳に沈着:耳鳴り、めまい、難聴 など
この中で、手足の痛み・しびれ、低汗症で見つかることが多いです。
ファブリー病の検査
検査としてまず以下のような検査を行います。
- 血液検査
- 尿検査
- 画像検査
その後、腎生検という組織を調べる検査を行い、必要に応じて遺伝子検査を行います。
ファブリー病の診断
ファブリー病の診断は総合判断で、以下の情報を参考にします。
- 問診内容:家族に同様の症状の人がいるのか
- 血液検査・尿検査:α-GALの活性の低下、GL-3の蓄積 など
- 病理検査:皮膚、腎臓などの細胞レベルの変化
- 遺伝子検査
男性では、遺伝子検査は必ずしも必要がありません。
女性では、血液検査・尿検査ではっきりと所見が見つからないことがあるので遺伝子検査を行うことで診断となります。(ただし遺伝子異常が無くてもファブリー病を否定するものにはなりません。)
ファブリー病の治療
ファブリー病は遺伝疾患ですが、近年治療に大きな進歩があった病気で、以下の治療を行います。
- 酵素補充療法
- シャペロン療法
- 保存的加療
酵素補充療法
αGAL活性を補い老廃物の蓄積を減らす治療です。
ファブラザイム、リプレガルなどの薬を約2週間に1度点滴で治療して補充します。
副作用としては、悪寒、発熱、倦怠感、呼吸困難などの症状が報告されております。
シャペロン療法
体内に残っているαGAL活性の能力を上げて、老廃物の蓄積を減らす治療です。
ガラフォルドカプセルと呼ばれる薬が2018年より日本で保険適応になったことで選択肢として検討されるようになりました。
この治療に効果が出るのは、一部の患者さんであり、効果があるかを遺伝子検査などで判断する必要があります。
保存的加療
上記2つは根本的な治療ですが、腎臓ならこれ以上悪くならないように高血圧などの他の要素を取り除いたり、腎臓を守る降圧薬RAS系阻害薬などを使用します。
治療を開始するタイミング
いつから治療を始めるのかに関しても男性と女性で異なります。
● 男性の場合
ファブリー病の症状が一つでも出現したら治療を開始します。
小児期よりGL-3などの老廃物が蓄積していることが多く、四肢の痛みを訴えから始まることが多い印象で、酵素補充療法などの治療を開始します。
● 女性の場合
女性に関しては特に決まりはありません。
臓器の障害が明らかになってきたら酵素補充療法などの治療を開始します。
ファブリー病の遺伝
ファブリー病は、X染色体という性別を規定する遺伝子のGLA遺伝子に異常があって起きます。
そのため男性の方が、女性よりも症状が強く重篤になる可能性が高いと考えれています。(男性はXY、女性はXXのため)
ただしGLA遺伝子の変異のパターンは現段階で600以上も報告されており、中には患者さんに何も症状を起こさない変異もあります。