
腎機能低下の原因

腎機能が低下する原因についてこのページで触れたいと思います。
この記事を読む前に理解して頂きたい3つのこと
このパラグラフの導入をどう書けばよいかは検討いきなりなんだよと思うかもしれませんが、腎機能が低下する原因の話をする前に理解をして頂きたいことが3つあります。
1つ目は、腎臓病に限らず多くの生活習慣病の原因は一つだけでなく複数あるということを理解しましょう。
つまり「腎機能低下の原因は〇〇」でなく、「腎機能低下の原因は〇〇と△△と▢▢」という説明が正しいです。
2つ目は、腎機能が低下する原因の話をするとき、腎機能が低下するメカニズムまで理解するのが手間のように見えて実は一番近道なのでメカニズムを必ず理解しましょう。
慢性腎臓病の中でも様々な腎臓病があります。腎臓病と一括りにせずに、自分はどのタイプの腎臓病でどのようなメカニズムで腎臓が悪くなり、どのように治療をすると良いかを理解することが大切です。
3つ目は、腎機能低下には、数日~数週間で急激に悪くなる「急性」の腎障害と、年単位で少しずつ悪くなる「慢性」の腎障害の2つのパターンに分けられることを理解しましょう。このページでは主に「慢性」の腎障害の話をしています。
なぜこの3つのことを先にお話しをしたかというと、腎臓病という病気は原因や治療を一括りに説明できない難しい病気であり、人によって、状況によって、診療をしていて「実はあなたの腎臓病は〇〇である!△△をすれば治る!」みたいなジャンクな情報に流されたり、良かれと思って飲んだサプリメントのせいで患者さんの腎臓を悪くしてしまった患者さんに一定数出会うためです。
腎障害のメカニズム
腎臓には糸球体と呼ばれる箇所と、尿細管・間質と呼ばれる箇所があります。
特にこの糸球体と呼ばれる箇所がどのように障害されているかを知ることは治療につながるので、必要に応じて血液検査・尿検査・画像検査や時によっては腎生検と呼ばれる精密検査を行います。
糸球体の障害腎臓には糸球体と呼ばれるフィルターのような役割を果たす箇所があります。
ここに必要以上に圧負荷がかかると糸球体が壊れていき、腎障害がおきます。
特に糖尿病や肥満などでは負荷が大きくかかることが多いです。
一方で、この糸球体に圧がかかりすぎないこと時も腎障害が起きます。特に腎硬化症や加齢による腎障害では圧不足になります。
この圧が足りないのか、多すぎるのかは腎臓の病気を考える上で非常に大切な視点となります。
尿細管・間質の障害糸球体だけでなく、尿細管・間質と呼ばれる箇所にも障害が起きることがあります。
尿細管・間質の障害は糸球体の障害の影響を受けて起きることもあれば、免疫の病気などによっても起きるため多彩なメカニズムが関わります。
尿検査で糸球体メインで障害されているのか、尿細管・間質がメインで障害をされているかをある程度予想することが可能です。
腎臓が障害される原因
血糖値
重度な腎機能低下が起きる一番の原因は血糖値です。
血糖値が腎機能低下の一番の原因となる病気を「糖尿病性腎症」と呼びます。
血糖値は腎臓の糸球体に負荷を与えて腎臓を壊します。
そのためHbA1cの値をHbA1c7.0%以下にすると良いです。
詳しくは「糖尿病性腎症」の記事をご参考にしてください。
動脈硬化
血糖値と同じくらい腎機能低下の原因になるのが動脈硬化です。
動脈硬化は血圧・タバコなどが原因で起きます。
動脈硬化が腎機能低下の一番の原因となる病気を「腎硬化症」と呼びます。
腎硬化症は比較的ご高齢な方に多く、比較的ゆっくり腎臓が悪くなっていくのが特徴です。
詳しくは「腎硬化症」の記事をご参考にしてください。
肥満
肥満は、腎臓の糸球体の負荷を増やすことで腎機能低下を起こします。
肥満が腎機能低下の一番の原因となる病気を「肥満関連腎症」と呼びますが、どちらかというと血糖値や動脈硬化がメインで、肥満はそれらと一緒に腎機能低下を起こすことが多いです。
免疫の病気
先ほどの3つの生活習慣とは異なり、身体の免疫の病気が原因で腎機能低下が起きることがあります。
様々な種類の免疫の病気がありますが、頻度の高いものとしてIgA腎症があります。
IgA腎症について詳しくは「IgA腎症」の記事をご参考にしてください。
遺伝の病気
遺伝性の病気が原因で腎機能低下が起きることがあります。
様々な種類の病気がありますが、頻度の高いものとして多発性嚢胞腎があります。
多発性嚢胞腎について詳しくは「多発性嚢胞腎」の記事をご参考にしてください。
原因を調べる検査
問診
一番大切なのは、実は問診です。
背景に生活習慣病がないか、免疫の病気を疑うエピソードがないか、遺伝がないかを伺って腎機能低下の原因を予想します。
血液検査・尿検査
血液検査・尿検査で腎機能低下の原因をある程度の予想することが可能です。
詳細は別のページに委ねますが、「尿タンパク」の有無は非常に大切です。
また血液検査・尿検査は1度だけでなく数年分データーをみて解釈することが望ましいです。
詳しくは「腎臓の血液検査・尿検査」の記事をご参考にしてください。
画像検査
腹部エコーでは腎臓の大きさや、表面のなめらかさを評価します。
例えば動脈硬化による腎臓の障害があると腎臓は小さくなり、表面がゴツゴツします。超音波で行う検査で被ばくなどのリスクがないため、最初に行われる画像検査です
また、腎臓だけでなく太い血管の動脈硬化を評価するために頸動脈エコーと呼ばれる画像検査をしたり、細い血管の糖尿病や動脈硬化の影響を評価するために眼底検査をおこないます。
詳しくは「腎臓エコー・画像検査」の記事をご参考にしてください。
腎生検
腎機能低下の原因を調べる検査として最も有効な検査は腎生検と呼ばれる組織の検査で、細胞レベルで何が起きているのかを調べることが可能です。
しかし、腎生検はリスクがある侵襲的な検査であり、入院が必要なことや大量出血のリスクがあることから、必要に応じてリスクをとってでも診断をつける価値があると判断した時に行います。
詳しくは「腎生検」の記事をご参考にしてください。