腎臓と食事

腎臓病でも食べてもいい野菜や果物について

まず最初に読んでほしいこと

慢性腎臓病の患者さんから、野菜や果物についての質問を頂くのでこのページでまとめてみます。

腎機能が低下していると、時に野菜・果物の制限が必要になることがあります。

ただし、腎機能が低下していると、たんぱく質や、塩分の制限も必要になることが多く、何を食べたらよいか分からないという声を聞きます。

野菜・果物の中でも、食べない方が良いものと、比較的に食べても大丈夫なものがあります。

ただし、食べて良いかどうかは患者さんの腎機能の状態によって異なるので最終的に主治医と相談をしてください。

全ての腎臓病の患者さんに制限はいらない

野菜・果物に含まれるカリウムが上がると突然死する不整脈を起こすため、我々医師側も腎機能が低下している患者さんの診療では食べている野菜・果物の量が気になります。

しかし、日本で現在、腎臓病と言われる腎機能が低下している方は1300万人もいて、全ての患者さんが野菜や果物を制限する必要はありません。

腎臓病には様々なタイプの腎臓病があり、以下の要因によってカリウムの溜まりやすさが異なるためしっかり採血をしながら制限が必要かを考える必要があります。

  • 腎機能が低下する原因の病気
  • 薬の影響
  • 腎機能低下の重症度 など

何故、野菜や果物を制限するのか

腎機能が低下した場合、例えば、血液透析になる直前の患者さんでは野菜や果物を含まれている『カリウム』という物質が、尿で排泄されなくなり、身体に溜まってしまいます。

この状態は高カリウム血症と言い、カリウムの値が5.5以上になると、突然死の原因となる不整脈が起きる可能性があるため注意が必要です。

患者さんによって、食べて良いかが異なると先ほど伝えましたが、「カリウムが5.5以上になる可能性が高い場合」は野菜・果物をひかえる必要があります。

野菜・果物と腎臓病(ベジタリアンの例から)

ベジタリアンと腎臓の相性はあまり良くないんじゃないかと言われていました。

野菜や果物に含まれる植物性蛋白や鉄分は腸での吸収の効率が悪く、その割にカリウムが含まれるのでベジタリアンは腎機能の視点から健康被害があるのではないかと考えられていたようです。

しかしながら、複数の長年の観察した研究結果から、肉食とベジタリアンを比較した場合、ベジタリアンの方が臨床経過が良いのではないかという報告や腎臓病で植物性蛋白をとっている割合が多い人の方が死亡率が低いという結果があるようです。(*1)

逆に、赤身を多く食べる患者の方が腎臓に良くないのではないかという研究結果も出ています。(*2)

その他、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化作用は微量ながらも腎保護的に働く可能性があること、食物繊維が、癌の抑制や血糖のコントロールを良くする効果があることから最近では野菜・果物については見直しが行われています。

*1 Am J Kidney Dis. 2016 Mar;67(3):423-30.

*2 J Am Soc Nephrol. 2017 Jan;28(1):304-312.

野菜と果物は腎臓に良いのか

腎機能低下が起きていると目の敵にされる野菜と果物ですが、視点を変えると腎臓にとって肯定的にとらえることも可能です。

血圧を下げる

例えば、野菜と果物に含まれるカリウムは血圧を下げる効果があります。血圧を下げることは腎臓にとって良いです。(*1)

不飽和脂肪酸が血糖を下げる

植物に含まれている脂質は不飽和脂肪酸といい、肉などに含まれる飽和脂肪酸を摂るのと比較して、尿病による腎障害を抑える可能性や生命予後を良くする報告もあります。

体が酸性になるのを防ぐ

腎機能が低下すると、体が酸性になり、酸性になると腎機能の低下が進みます。その際に重曹と呼ばれる体をアルカリにする薬を使用しますが、野菜・果物でも同様の効果が得られると報告されています。(*2)

*1 高血圧ガイドライン2020

*2 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018

腎臓病で食べない方が良い野菜・果物

アメリカの科学誌から、腎機能が低下している患者さんで避けるべき食材として「一部の野菜・果物、加工食品、肉、乳製品」などが挙げられています。一部の野菜・果物として、以下の3つはカリウムの吸収が良いため控えるように書かれています。

  • ジュース
  • ベジタブルソース
  • ドライフルーツ

加えて、臨床家の中ではイモ類でカリウムが上がることが経験として共有されており、自分の診療でも注意するように伝えています。

  • イモ類

一方で、葉物などはあまりカリウムが上がらないので透析直前の重症の患者さんでは制限していますが、軽症~中等症の患者さんでは制限が不要なことが多いです。

ただ結局、個人差も結構大きいので、最終的には血液検査でカリウムを測定しながら必要性を見極めています。

*1 Plant-Based Diets for Kidney Disease: A Guide for Clinicians

カリウムを下げる薬を飲みながらしっかり食事をとる(私見)

これはあくまで私見ですが、野菜・果物を制限したり茹でこぼしたりすることで大切な栄養素が抜けてしまうので、患者さんによって食事をしっかりとりながらカリウムを下げる薬を飲むことを勧めています。

2020年にカリウムを下げる効果の高い「ロケルマ」という薬が出ました。

この薬のおかげで、自分が診察している患者さんの大半で野菜・果物の制限が不要になりました。

実際、腎機能が低下した患者さんで、ロケルマを使用したところ、投薬制限なし・食事制限なしで1年間カリウムの値を5.5以下に保つことができたという報告があります。(*1)

*1 Sodium Zirconium Cyclosilicate among Individuals with Hyperkalemia(CJASN)

これは個人的な意見で、医師によって治療方針が変わるので主治医の先生としっかり相談をしてください。

腎臓の食事の情報との付き合い方

「腎臓病では野菜・果物をすべて食べてはいけない」というのは、あまりに酷だと思います。

腎臓病の治療は一生続けるものです。

腎臓病であってもどの野菜・果物なら食べても良いかを主治医や管理栄養士と検討していくのが良いでしょう。

ただしそのためには、患者さんが腎臓の学習して理解するという努力が必要です。

最低でも以下の2つは必ず理解した上で野菜・果物を選んでいく必要があるでしょう。

  • 自分の腎臓の状態はどの程度なのか
  • カリウムとは何か

(逆にこの2つを理解していない時は、厳しいかもしれませんがすべて制限するしかないかもしれません。)

 

過去に腎臓を保護する要因を調べた研究が行われ、患者さんが腎臓の学習して理解することが腎臓を保護することが分かりました。

患者さんに、「腎臓を悪くしないために何が一番効果的ですか」と聞かれたら、「腎臓のことを学習することです」と伝えています。

今回の腎臓病と野菜・果物を考えるには少なくとも以下の記事を参考に学習してください。

腎臓の学習をするのは、根気がいることかもしれません。

しかし、しっかり学習をすることで「〇〇が腎臓に良い」に惑わされ、もぐらたたきを続ける必要がなくなります。

急がば回れです。このサイトで是非腎臓のことを学習してください。