腎臓の働きが悪くなると
こんにちは、じんぞうの学校のホームページにお越しいただきありがとうございます。
じんぞうの学校の校長で腎臓専門医の森 維久郎です。
前回は「腎臓が悪いと言われたら」というテーマでお話をさせて頂きました。
今日は腎臓の働きが悪くなるとどうなるのかについてお伝えしていこうと思います。
腎臓は単に尿を作る地味な臓器だと考えられてきましたが、近年様々な研究でその多様な働きが解明されて、NHKの特集でも「人体ネットワークの要! スーパースター」として取り上げられるほど、心臓、腸、骨などの様々な臓器と関わっていて体全体をコントロールしていることがわかりました。
腎臓の働きが悪くなり、役割を担えなくなると全身に様々な合併症が起きて、対策が必要になるのでその点にお伝えしようと思います。
腎臓の働き
腎臓の働きはシンプルにまとめると
- 不要なものを体の外に出す
- 必要なものを体にとどめておく
- 体に必要なホルモンなどを作る
の3つがあります。
腎臓には糸球体(しきゅうたい)という場所と尿細管(にょうさいかん)という場所があって、それらの緻密な構造によってその役割を果たしています。
糖尿病や高血圧などによって腎臓の働きが悪くなると、この3つの働きが低下して全身に様々な症状や合併症を引き起こします。
筋肉が衰える
腎臓の働きが悪くなると、筋肉量や筋力が低下しやすくなり、健康な人と比較して身体機能が7割程度になると言われています。
結果、寝たきり、サルコペニアになる確率が高くなり、例えば慢性腎臓病ステージ5の患者さんは健康な人と比べて、寝たきりになる確率が約5〜6倍になると言われています。
ほんの10年前まで慢性腎臓病の患者さんは、運動をしてはいけないと言われていましたが、ここ数年で筋力を守るため積極的に運動をしていきましょうと考えられています。
腎臓リハビリテーションという概念も生まれており、万歩計や歩数手帳を使って運動を促す流れになっています。
水分が身体に溜まる
腎臓では、脱水の時には尿から水分を出さないように、水が多い時は尿から水分を出すように調整する機能があります。
働きが悪くなると水分が排泄されず足が浮腫んだり、進行すると肺や心臓、全身に水が溜まり呼吸が出来なくなったりや心不全の原因となります。
ミネラルの異常が起きる
腎臓は、尿細管という緻密な構造を持つ箇所でナトリウム、カリウムなどミネラルを調整する役割を担います。
腎臓の働きが悪くなるとミネラルの調整異常が起きて、様々な異常をきたします。
特に大切なのはカリウムというミネラルが溜まる高カリウム血症、重炭酸イオンが不足して体が酸性になるアシデミアは、重症化すると死に至るため注意が必要です。
血圧が上がる
腎臓では、体の水分や塩分の調整や、レニンやアルドステロンと呼ばれる血圧をコントロールするホルモンを調整する働きがあります。
腎臓の働きが悪くなるとこの調整に障害が起きて血圧が上がりやすくなります。
慢性腎臓病では、半数以上の方に高血圧があり、重症度が増すと複数の血圧の薬を飲まないと血圧が下がらなくなります。
骨が脆くなる
腎臓は活性型ビタミンDと呼ばれる、 腸からのカルシウムの吸収を促すビタミンの調節に関わります。
腎臓の働きが悪くなると活性型ビタミンDの調整が出来なくなり、血液中のカルシウムが低下します。
血液中のカルシウムが低下すると、骨を溶かしてカルシウムを補おうとするため、骨が脆くなりやすくなります。
単に骨が脆くなるだけでなく、骨を溶かした際に一緒に出てくるリンという物質は、心筋梗塞の発症を増やしたり、腎機能低下を引き起こすと言われています。
腎臓病のことのミネラル異常を「CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)」と呼びます。
貧血になる
腎臓は、エリスロポエチンと言うホルモンを分泌します。
エリスロポエチンは骨髄という血液を作る臓器に作用して血液を作らせる役割があります。
腎臓の働きが悪くなるとこのエリスロポエチンが不足して、貧血になります。
腎機能が低下して起きる貧血を「腎性貧血(じんせいひんけつ)」と言います。
腎性貧血は、単に貧血症状が起きるだけでなく、心臓や腎臓を障害するので、腎臓が悪くなると定期的にエリスロポエチンを補充する治療を行います。
その他
代表的な物を色々挙げましたが、その他に腎臓が悪くなると以下のような異常が起きます。
- 腸内環境が乱れる
- 睡眠の質が落ちる
- 頻尿になる など
腎臓が悪くなると、薬が増えていくのは全身に様々なことが起きるのが原因です。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
単におしっこを作るだけの臓器でなく様々な役割を担っていることがお分かり頂けたと思います。
腎臓が悪くなると
- 筋肉が衰える
- 余分な水分が体に溜まる
- ミネラル異常が起きる
- 血圧が上がる
- 骨がもろくなる
- 貧血が起きる
などの症状が起きるため、様々な対策が必要になります。
次回の記事では、「慢性腎臓病」について触れたいと思います。
慢性腎臓病はあまり聞きなれない病気かもしれませんが、実は日本人の8人に1人が罹っている国民病と言われています。
慢性腎臓病の症状、原因、対策法、やるべきことについて解説しているのでご興味がある場合は是非ご覧になってくださいね。
この記事を書いた人
じんぞうの学校の記事は腎臓専門医の森 維久郎が監修しております。
年間1万人以上(延べ人数)の患者さんする傍ら、書籍(合計2万冊以上)やYoutube(チャンネル登録者数17000人以上)で積極的に情報発信を行っております。
YOUTUBEチャンネル
書籍
- 書籍「腎臓病とわかったら最初に読む食事の本(無理なく続けられる満足レシピ)」
- 書籍「赤羽もり内科・腎臓内科式 腎臓病のレシピの教科書: 管理栄養士にも役立つ」
- 書籍「専門医が教える! 腎機能を守る食べ方・運動・生活習慣」
- 書籍「腎臓病でも楽しめるラーメン・パスタ・うどん(奇跡の減塩レシピ)」
連携クリニック
じんぞうの学校は「赤羽もりクリニック」と連携しております。
赤羽もりクリニックは腎臓病の悪くならないようにすることに特化したクリニックで、腎臓専門医4名、管理栄養士5名を中心に日々の診療をしております。
特に管理栄養士による栄養相談に力を入れており、年間3600件以上の栄養相談を受け入れております。
クリニックについては以下の動画をご参照ください。
クリニックにご興味がある方は以下のボタンをタップして公式ホームページをご覧ください。
【じんぞうの学校について】
【基礎知識】
【食事療法総論】
【食事療法各論】
【コラム】